鍼灸の適応疾患

 

鍼灸と聞くと、肩こりや腰痛、頭痛といったコリや痛みに対する効果がよく知られていますが、その他の多くのつらい症状にも対応することができます。

 

代表的なものに以下のような疾患、症状があります(全ての方に効果があるわけではありません。)。

 

鍼灸の治療は本来、病名に捉われず、からだ全体に働きかけ、その人自身の持っているからだの働きを引き出す、根本的な治療法です。以下にある疾患や症状以外でも、気になる症状があれば、まずはお気軽にご相談ください。

 

 

【神経系疾患】

神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー 

 

【運動器系疾患】

関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛

外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫) 

 

【循環器系疾患】

心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ 

 

【呼吸器系疾患】

気管支炎・喘息・風邪および予防 

 

【消化器系疾患】

胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎

肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾 

 

【代謝内分秘系疾患】

月経前症候群(PMS)

 

【生殖、泌尿器系疾患】

膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎 

 

【婦人科系疾患】

更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道

・不妊 

 

【耳鼻咽喉科系疾患】

中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう

・咽喉頭炎・へんとう炎 

 

【眼科系疾患】

眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい 

 

【小児科疾患】

小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)

・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善 

 

 

 

鍼灸に関するWHO地域間セミナー(1979年)における、鍼が役に立つとされる疾患の暫定リスト

 

こちらは1979年にWHO地域間セミナーで出されたものです。

(WHOの見解ではありません。)

 

「このリストは臨床経験に基づくものであって、必ずしも対照群を置いた臨床試験に基づくものではない。また、特定の疾患を含めたことは、鍼の有効性の範囲を示すことを意図するものでもない」とされています。

 

1) 上気道4疾患:急性副鼻腔炎・急性鼻炎・感冒・急性扁桃炎

 

2) 呼吸器系3疾患:急性気管支炎・小児気管支喘息および気管支喘息(合併症のない患者に最も有効)

 

3) 目の障害4疾患:急性結膜炎・中心性網膜炎・小児の近視・合併症のない白内障

 

4) 口の障害5疾患:歯痛・抜歯後の疼痛・歯肉炎・急性咽頭炎および慢性咽頭炎

 

5) 胃腸障害15疾患:食道痙攣および噴門痙攣・しゃっくり・胃下垂・急性胃炎および慢性胃炎・胃酸過多・慢性十二指腸潰瘍(疼痛の緩和)・合併症のない急性十二指腸潰瘍・急性腸炎および慢性腸炎・急性細菌性赤痢・便秘・下痢・麻痺性イレウス

 

6) 神経系および筋骨格障害17疾患:頭痛および片頭痛・三叉神経痛・初期(6か月以内)の顔面麻痺・脳卒中発作後の麻痺・末梢性ニューロパチー・初期(6か月以内)のポリオ後遺症・メニエール病・神経性膀胱生涯・夜尿症・肋間神経痛・頸腕症候群・五十肩・テニス肘・坐骨神経痛・腰痛・変形性関節症


 

米国・国立衛生研究所(NIH)

「鍼治療に関する合意のためのパネル会議(Consensus Panel)」(1997)

こちらは1997年にNIHで「鍼治療に関する合意のためのパネル会議の声明としてだされたものです(NIHの見解ではありません)。

臨床試験に基づくものですが「多くの研究データの質が十分でないため明確な結論は導けない」としながらも、鍼の可能性に関して出されたものです。

 

有望である

成人の術後および化学療法による嘔き気・嘔吐

歯科の術後痛

妊娠悪阻(つわり)

 

補助療法として有用、または包括的患者管理計画に含める可能性がある

薬物中毒・脳卒中後のリハビリテーション・頭痛・月経痛・テニス肘・線維性筋痛症・筋筋膜痛・変形性関節症・腰痛・手根管症候群・喘息の11疾患

 

2021年現在、コクラン・レビュー、UpToDate、日本の国内の診療ガイドラインで、鍼灸に肯定的な結論、推奨、あるいは記述がされている症状、疾患。

 

コクラン・レビュー

コクランは英国に本部を置く国際的なネットワークで、登録された非営利団体であり、英国国立ボランティア団体協議会のメンバーでもあります。コクランは質の高い質の高いシステマティック・レビューとして定評があるとされています。

 

緊張型頭痛 片頭痛予防 

(薬物療法と比較して)

術後の嘔気・嘔吐 前立腺炎の症状軽減 慢性腰痛 産痛軽減 線維筋痛症

(通常治療と比較して)

骨盤位妊娠(灸)

 

UpToDate

UpToDateはオランダで運営され、世界180か国で利用されている、診療の際、医師が遭遇する疑問に、即座に実用的な回答を得られるようデザインされたエビデンスに基づく臨床意思決定支援(CDS)リソースです。

慢性疼痛 術後の嘔気・嘔吐 化学療法による嘔気 歯痛を含む急性疼痛 頭痛 慢性閉塞性肺疾患(COPD)季節性アレルギー性鼻炎 更年期のホットフラッシュ 急性麦粒腫 がん性疼痛

 

日本の診療ガイドライン

健康に関する重要な課題について、医療利用者と提供者の意思決定を支援するために、システマティックレビューによりエビデンス総体を評価し、益と害のバランスを勘案して、最適と考えられる推奨を提示する文書。公益財団法人日本医療機能評価機構。

 

慢性疼痛 片頭痛予防・緊張型頭痛 線維筋痛症の疼痛・こわばり他 がん化学療法・放射線療法に伴う嘔気 過敏性腸症候群 産痛緩和 陣痛促進 ジストニア 乳がん内分泌療法によるホットフラッシュ・睡眠障害 COPDなど非がん性呼吸器疾患の呼吸困難の軽減

 

鍼灸の世界も科学的な研究、解明が進められていますが、科学的根拠(エビデンス)としては、まだまだ不明な部分も多いようです。患者さんに安心して鍼灸の施術を受けていただく為にも、これからさらに解明されていくことを期待しています。

 

ただ、もともと鍼灸(東洋医学)は経験の積み重ねから生まれた医学です。科学的根拠(エビデンス)がないから効果が無いということではありません。

 

最初に書いたように、鍼灸の治療は、病名に捉われず、からだ全体に働きかけ、その人自身の持っているからだの働きを引き出す、より根本的な治療法です。コリや痛みをはじめ様々な症状に対応することができます。

 

気になる症状があれば、まずはお気軽にお問合せ下さい。

 

 

参考文献・引用

鍼灸のことが気になったらまず読む本 Q&A89 

中外医学社 寺澤佳洋編著 

p20、21及び 表13-1 「コクラン・レビュー、UpToDate、日本の国内の診療ガイドラインで、鍼灸に肯定的な結論、推奨、あるいは記述がされている症状・疾患」

 

森ノ宮医療大学 鍼灸情報センターHP

鍼の適応症とWHO 鍼の適応症とNIH

 

赤門鍼灸柔整専門学校HP 

赤門教職員コラム 第10回『WHO(世界保健機関)が定めた鍼灸の適応症』浦山久嗣著